ベルベル人文化発祥の街といわれているイミルシル。
たどり着いたところは、1時間もあれば町を1周できるんじゃないか
というくらい、小さな町だった。
道中にあった近くの村
シーズン中は観光客もよく来るらしく
食堂やホステルなんかはたくさんあった。
相変わらずラマダン中なので、観光客もいなくてカフェもガラガラ。
街の中には特に見所がなかったので
地図にのっていた近くの湖に行ってみた。
湖は、すごーくきれいだった。
一人として人が居なくて、寂しいところだなと思っていたら
一人のおじさんが自転車でやってきて、話しかけてきた。
私達がフランス語が喋れないというと、たどたどしい感はあるものの、
ゆっくりと英語で話してくれた。
おじさんは近くに住む5人の子どもがいるベルベル人。
フェズの大学で勉強して、今は先生になる機会を待っていると言っていた。
そして、ここでの暮らしやベルベル語のことや、山道のことなどを
丁寧に教えてくれた。
おじさんは何度も
「ごめんねぇ、こんな英語でしか話せなくって。
フランス語だったら、もっと沢山話せるのに・・・・」
と、コトあるごとにそう言っては、ものすごく悲しい表情を見せた。
こっちが申し訳ない気分になるくらい、ひたすら謝っていた。
理解しあうには十分なのだが、おじさんにしては歯がゆかったんだろう。
それでも、一生懸命話すおじさんが
目の前にある湖にまつわる、こんな伝説の話をしてくれた。
「昔、ここに住む娘と、違う村に住む男が恋におちたんだ。
だけど、お互いの村の人々は共に憎しみあっていて
そんな両親たちが、結婚を許すはずがなく、その恋は実らず
泣き明け暮れた二人の涙が、この湖を作ったんだよ。
ここは娘の涙、この先の村には男の涙の湖があるんだ」
この湖は美しいけど、ものすごく寂しい感じがしたのは
そのせいだったのか分からないけど、とにかく涙が出るほど
青くてきれいな湖なのだ。
そして、おじさんの人柄もまた美しかった。
服とかボロボロなんだけど、魂が透き通っていた。
こういう人に私は、何年かに1度会うときがある。
それは、夢なんじゃないか思うほど、一瞬の出会い
だったりする。
多分二度と会うことはないかもしれない。
だけど、この人の存在を思い出すだけで、自分の心が救われる。
神様みたいな人が、世の中にはいるもんなんだなぁ。
別れ際に彼は、9月中旬にベルベル人のお祭りがあるから、
時間があるならまた寄ってみれば??
と、祭りのことを教えてくれた。
どうやら、この地で有名なベルベル人の結婚儀式が行われる
期間のことらしかった。
それに、3日通して音楽祭も行われるらしい。
そろそろ行かなきゃと言って、自転車を持ち上げたおじさんに
「もう一度来たら、僕達またあえるかもしれないですね!」
マークスがそう言うと
「イン・シャ・アッラー!」
と、笑顔で手を振って帰っていった。
「そういえば、名前聞いてなかった!名前は???」
「モハー!」
わたしはなんとなく、このモハーおじさんにもう一度絶対会いたくなって、
ここに戻ってくるような気がしてならなかった。
彼が去った後、私達は湖の反対側にあった建物の前に
車を止めて、蚊と格闘しながら一晩過ごした。
この日はなんだかとっても、満たされた1日だった。
この日は曇っていたけど、湖はどこまでも深そうな青い色をしていた。
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