船が着いたナドールという港から、ちょっと外れたところにあった
市場街に車を止め、探索してみることにした。
街のあちらこちらにあって、普段おじさんたちの社交場になっているカフェは、
ラマダンの為ガラガラだった。
たまに席についてる人を見かけても水すら飲んでなくて、
ただただ暑さにうな垂れていた。
私達は通りをぶらつき、さっそくぼったくられたであろう買い物を済まし、
「ま、こんなものか。これで、ひとつお勉強したことにしよう」
と言って街を出るため、床屋さんの前に泊めてある車に戻った。
車に乗り込もうとしたとき、一人のおじさんがドイツ語で声を掛けてきた。
「ハロー、ドイツから来たんでしょ?これからどこ行くの??」
「いやー、わかんないけどとりあえず東のアルジェリアの国境
近くまで行って、ガソリン満タンにしようかな、なんて・・・」
(アルジェリアはガソリンが激安なので)
予定もないのにマーカスがそんなようことを言っていた。
「時間があるなら、うちに来ない?
今、ここで息子の髪を切っていて、終わったらその辺で買い物してる嫁を
タクシーで拾って山の上にある家に帰るから、付いておいで。」
てきぱきした口調で話すおじさんに、ふたつ返事でYESと言って、
そのまま着いていくことにした。
初日から出ました!
モスレマンホスピタリティー!(←と、私は勝手に呼んでいる。)
しばらく忘れてた、この感じ。
これだから旅はスバラシイと思う瞬間に、最初の1歩で出会ってしまった。
おじさんの名前は、思ったとおりモハメッドであった。
彼の家は街から20キロ離れた山の上の集落にあり、
家の庭にはどっさり実をつけたイチジクの木が3本もあった。
家に着くなり、捥ぎたてをこれでもかというくらい、手のひらいっぱいに
盛ってくれた。
とれたてのイチジクは、めちゃめちゃおいしかった。
モハメッド宅
家の敷地内を案内され、とりあえずお茶でも飲んで一息つこうということで
居間らしきところに通された。
ラマダン中じゃないの??と思ったんだけど、心臓に病があるモハメッドは
ラマダンをしなくても良いらしく、食事も普通にとると言っていた。
奥さんのラシーダはラマダン中なのに、不意の来客のために
自分は飲めないお茶や、お昼ご飯の準備までしてくれて、
少し申し訳ない気持ちになった。
モハメッドは50過ぎのおじさんで、以前7年ほどフランクフルトに
住んでいたらしい。
その後はオランダに移住し、今はパリに住んでいて、年に1度1ヶ月だけ
家族のもとに帰ってくるのだと言っていた。
最初はとても穏やかだったモハメッド。
お互いのことを少しずつ話していくうちに、どこかの瞬間から彼の
様子が急に慌しくなり、モロッコ人の悪口を言い出した。
「モロッコ人はうそつきで、低脳で、犯罪者だ。
そして超危険だ!うそじゃないよ。
それに私は人種差別者でもない。私は散々な目にあったんだから。」
鼻息を荒くして大声でこう話す当の本人こそ、モロッコ人。
そこに招かれたあたし達って一体・・・・・
どうか彼自身が口にしているようなモロッコ人ではないことを、
心の片隅で祈りつつ、この先3日間をこの家族と過ごすことになった。
この日の午後は、車で10分ぐらい下っていったところにある
地中海のビーチに、息子君のヨセフと、そのいとこを連れて
泳ぎに行った。
思ったとおりビーチにいる人間の殆どは、男性か子どもだった。
髪も肌も隠しておかななきゃいけないイスラム教徒の女性が、
水着になることなんて、ここのビーチではありえない。
気温は40度を超えているぐらいの暑さなのに、ビーチでもひたすら
肌を隠して、ただ海の方を見ているだけの女性の後姿を見て、
心の底から気の毒だと思った。
しかし、そんな女性達を尻目に、そして少しの罪悪感を纏いつつも
私は泳ぎまくった。
海はきれいで最高に気持ちよかった。
初日から慣れない暑さでヘトヘトになりかけていた体が、
一瞬でリフレッシュ!
気分も一新、生まれ変わったところで家に帰ると、ラシーダが
例のハリラを作って待っていてくれた。
イフタール。真ん中は生イチジク。左下の黄色い実はサボテンの実。
とは言え、日が暮れる7時のアザ-ン(お祈りの合図)まで
ラシーダは食べることも飲むことも出来ない
最後の1時間は彼女にとって、一番つらそうだった。
10分おきに、「今、何分??」と聞いてくる。
この暑さの中、水の1滴も飲まないその強靭な忍耐力には頭が下がる。
腹ペコは慣れるらしいけど、水分を取れないのが実は一番厳しいらしい。
真夏のラマダンがなおさら地獄なのは、言葉にしなくても辛い気持ちが伝わってくる。
日が沈み、7時のアザーンが聞こえてきたところで
まず真っ先に彼女は台所に駆け込み、ものすごい勢いで水を飲んだ。
彼女の顔に正気がもどり、私も少しホッとして
さっきよりもっとリラックスできるようになってきた。
ラシーダがほっと一息ついたところで、イフタールの時間が始まる。
イフタールとは、英語で言えば「BREAKFAST」。
つまり断食を断つ食事のことを意味する言葉で、
この日も定番のハリラやらナツメヤシやらが、中庭に出したちゃぶ台に
運び込まれてきた。
ハリラをゆっくりすすった後、ミントティーをのみながら夕食の時間を待つ。
ああ、なんてゆるりとした時間なんだろう・・・・・
夜になって涼しい風が吹き始め、熱くて厳しい1日の終わりを告げていた。
そして、夕食の時間がやってきた。
今日はクスクスだ。
旅の初日でもうこの感じ!
知らない国のどこかで初めて会う人たちと大皿に盛られた料理を分け合って食べる。
私が旅で一番楽しみにしている瞬間。
ああ、なんて幸せなんだろう。。。。
「いい人は、いい人を呼び寄せるんだよ。これもアッラーの思し召し。
イン・シャ・アッラー!」
優しい目をしたモハメットが、満面の笑顔でこう言った。
私もこの瞬間はこの偶然の出来事を、心の底から感謝していた。
しかし、こういう気持ちのままで終わらせてくれないのが
モロッコだったなぁというのがこの旅の感想、
私が会ったモロッコ人に対しての印象かなぁ・・・
その辺のこともボチボチ書いてゆきます。
大きなイチジクに木の下で
市場街に車を止め、探索してみることにした。
街のあちらこちらにあって、普段おじさんたちの社交場になっているカフェは、
ラマダンの為ガラガラだった。
たまに席についてる人を見かけても水すら飲んでなくて、
ただただ暑さにうな垂れていた。
私達は通りをぶらつき、さっそくぼったくられたであろう買い物を済まし、
「ま、こんなものか。これで、ひとつお勉強したことにしよう」
と言って街を出るため、床屋さんの前に泊めてある車に戻った。
車に乗り込もうとしたとき、一人のおじさんがドイツ語で声を掛けてきた。
「ハロー、ドイツから来たんでしょ?これからどこ行くの??」
「いやー、わかんないけどとりあえず東のアルジェリアの国境
近くまで行って、ガソリン満タンにしようかな、なんて・・・」
(アルジェリアはガソリンが激安なので)
予定もないのにマーカスがそんなようことを言っていた。
「時間があるなら、うちに来ない?
今、ここで息子の髪を切っていて、終わったらその辺で買い物してる嫁を
タクシーで拾って山の上にある家に帰るから、付いておいで。」
てきぱきした口調で話すおじさんに、ふたつ返事でYESと言って、
そのまま着いていくことにした。
初日から出ました!
モスレマンホスピタリティー!(←と、私は勝手に呼んでいる。)
しばらく忘れてた、この感じ。
これだから旅はスバラシイと思う瞬間に、最初の1歩で出会ってしまった。
おじさんの名前は、思ったとおりモハメッドであった。
彼の家は街から20キロ離れた山の上の集落にあり、
家の庭にはどっさり実をつけたイチジクの木が3本もあった。
家に着くなり、捥ぎたてをこれでもかというくらい、手のひらいっぱいに
盛ってくれた。
とれたてのイチジクは、めちゃめちゃおいしかった。
モハメッド宅
家の敷地内を案内され、とりあえずお茶でも飲んで一息つこうということで
居間らしきところに通された。
ラマダン中じゃないの??と思ったんだけど、心臓に病があるモハメッドは
ラマダンをしなくても良いらしく、食事も普通にとると言っていた。
奥さんのラシーダはラマダン中なのに、不意の来客のために
自分は飲めないお茶や、お昼ご飯の準備までしてくれて、
少し申し訳ない気持ちになった。
モハメッドは50過ぎのおじさんで、以前7年ほどフランクフルトに
住んでいたらしい。
その後はオランダに移住し、今はパリに住んでいて、年に1度1ヶ月だけ
家族のもとに帰ってくるのだと言っていた。
最初はとても穏やかだったモハメッド。
お互いのことを少しずつ話していくうちに、どこかの瞬間から彼の
様子が急に慌しくなり、モロッコ人の悪口を言い出した。
「モロッコ人はうそつきで、低脳で、犯罪者だ。
そして超危険だ!うそじゃないよ。
それに私は人種差別者でもない。私は散々な目にあったんだから。」
鼻息を荒くして大声でこう話す当の本人こそ、モロッコ人。
そこに招かれたあたし達って一体・・・・・
どうか彼自身が口にしているようなモロッコ人ではないことを、
心の片隅で祈りつつ、この先3日間をこの家族と過ごすことになった。
この日の午後は、車で10分ぐらい下っていったところにある
地中海のビーチに、息子君のヨセフと、そのいとこを連れて
泳ぎに行った。
思ったとおりビーチにいる人間の殆どは、男性か子どもだった。
髪も肌も隠しておかななきゃいけないイスラム教徒の女性が、
水着になることなんて、ここのビーチではありえない。
気温は40度を超えているぐらいの暑さなのに、ビーチでもひたすら
肌を隠して、ただ海の方を見ているだけの女性の後姿を見て、
心の底から気の毒だと思った。
しかし、そんな女性達を尻目に、そして少しの罪悪感を纏いつつも
私は泳ぎまくった。
海はきれいで最高に気持ちよかった。
初日から慣れない暑さでヘトヘトになりかけていた体が、
一瞬でリフレッシュ!
気分も一新、生まれ変わったところで家に帰ると、ラシーダが
例のハリラを作って待っていてくれた。
イフタール。真ん中は生イチジク。左下の黄色い実はサボテンの実。
とは言え、日が暮れる7時のアザ-ン(お祈りの合図)まで
ラシーダは食べることも飲むことも出来ない
最後の1時間は彼女にとって、一番つらそうだった。
10分おきに、「今、何分??」と聞いてくる。
この暑さの中、水の1滴も飲まないその強靭な忍耐力には頭が下がる。
腹ペコは慣れるらしいけど、水分を取れないのが実は一番厳しいらしい。
真夏のラマダンがなおさら地獄なのは、言葉にしなくても辛い気持ちが伝わってくる。
日が沈み、7時のアザーンが聞こえてきたところで
まず真っ先に彼女は台所に駆け込み、ものすごい勢いで水を飲んだ。
彼女の顔に正気がもどり、私も少しホッとして
さっきよりもっとリラックスできるようになってきた。
ラシーダがほっと一息ついたところで、イフタールの時間が始まる。
イフタールとは、英語で言えば「BREAKFAST」。
つまり断食を断つ食事のことを意味する言葉で、
この日も定番のハリラやらナツメヤシやらが、中庭に出したちゃぶ台に
運び込まれてきた。
ハリラをゆっくりすすった後、ミントティーをのみながら夕食の時間を待つ。
ああ、なんてゆるりとした時間なんだろう・・・・・
夜になって涼しい風が吹き始め、熱くて厳しい1日の終わりを告げていた。
そして、夕食の時間がやってきた。
今日はクスクスだ。
旅の初日でもうこの感じ!
知らない国のどこかで初めて会う人たちと大皿に盛られた料理を分け合って食べる。
私が旅で一番楽しみにしている瞬間。
ああ、なんて幸せなんだろう。。。。
「いい人は、いい人を呼び寄せるんだよ。これもアッラーの思し召し。
イン・シャ・アッラー!」
優しい目をしたモハメットが、満面の笑顔でこう言った。
私もこの瞬間はこの偶然の出来事を、心の底から感謝していた。
しかし、こういう気持ちのままで終わらせてくれないのが
モロッコだったなぁというのがこの旅の感想、
私が会ったモロッコ人に対しての印象かなぁ・・・
その辺のこともボチボチ書いてゆきます。
大きなイチジクに木の下で
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