娘はヤクの乳搾りに出かけ、私たちは放牧しに行く男たちと朝ごはん。
パミールの朝の食事は「シールチャイ」という牛や山羊のミルクティーに塩を入れて
その中にバターを溶かしてパンを浸して食べるのが定番。
早速頂きましたが・・・・なんともいえないお味。
昔飼っていた犬(チャビ犬)のご飯を思い出した。
きっついなぁ。
一族とお別れをして、ワハン渓谷に向かう。
道沿いにある大きな「ZorKul」という湖の辺りから、タジキスタンと
アフガニスタンの国境線がバリ線みたいなので区切られてるのが見えるように
なってきた。
ワハン渓谷
タジキスタンとアフガニスタンの国境を流れるパミール川の渓谷なんだけど
住んでいたのは元々は同じ谷の民族、ただの「ワハン人」だった。
だけど領地の問題で帝政ロシアや大英帝国やらに川を境にバスッっと国境線が
引かれてしまって、川の南側をアフガニスタン、北側をタジキスタンの
2国に分けられてしまった所。
渡ろうと思えば余裕で渡れるけど、見つかったら即射撃らしい。
でも、とにかくこの渓谷の秘境感ったらない。
よくぞここまでやって来れた、私達!
こういう所、ナショナルジオグラフィックでしか見たことないし!
向こう岸はアフガニスタン |
とは言うものの、泊まる所がこの川沿いにしかなく、ということはアフガニスタンとの
国境で野宿するのと全く同じで、さっきまで内心ソワッっとしてたんだけど
ここにきてマーカスに不満をぶちまけた。
なんか私達、無防備すぎるのではないかい?
しかし彼は、ここはタジキスタンなのに何の心配があるの???となかなか
分かってくれない。
たしかにそうだけど、川幅5mもなくてバリ線ももうなくなっていて、
あっち側のアフガニスタンの人々が何をしているのかが分かるぐらいの距離。
「アフガニスタン=タリバン」
という偏見。
多聞に漏れず、しっかりと自分にも刷り込まれていることがよーく分かった。
私の恐怖心は、ジワジワと絶頂に達しそうになっていた。
しかし他に泊まれそうな場所もないので、仕方なくそこで1晩過ごすことになった。
夜になって、戦争の話がはじまった。
なんでテロが起きたか、その前にアメリカがどういう国だか考えたことがあるか。
中央アジアや中東の歴史の話から宗教の話になり、なぜ戦争がはじまるのか、
なんでアメリカは戦争をやめられないのか。
話がヒートアップしまくった。
私が知っていることと、マーカスが知っていることにものすごく差がある。
平和ボケのニッポン人とは私の事だと思った。
それでも私なりに世界情勢のことは気になるし色々考える時だってある。
でも結局はイスラム圏=過激派テロリスト、危険。
大抵の人はそう思うんじゃないかな?
日本で報道されてることがすべてじゃないし、その内容もどこまで本当かわからない。
知っている物事の量じゃなくて、真実を知って自分の意見を持つことがいかに
大事かね。
たしかに情勢が不安定なところはあるし、危険区域だってあるしまだ沢山の人が
犠牲になってるのも事実。
ってこれはアフガニスタンの話。
5m先の国の話。
ここはタジキスタンだし、内戦なんてとっくに終わってるし、すぐそこに
アフガンのおっさんがいるけど、どこにでもいる普通のおっさんなんだ。
マーカスと色々話をして、新たにいろんな事を教えてもらって
ネガティブなフィルターがぺロッっと一枚はがれた感じ。
明日からの国境の旅は大いに楽しめる!
と思うことにして、多少恐怖がくすぶってる感が否めないまま、ワハンの旅は
続き 、次の日からも同じような川沿いで寝床を探す。
向こう岸のアフガニスタンには、馬やロバに荷物をどっさり載せた男たちが西の方に
むかって行くのが見える。
後で聞いたら彼らはパキスタンから来ていて、バザールで商売する人達だと言っていた。
シルクロードを旅するキャラバンは、きっとこんな感じだったんだろうな。
ナショジオの表紙を飾れそうな少女 |
こっちに回って来て、大正解だった。
こんなところに道路があるってこともほんとすごいことだし、
半端じゃなくデカい山、どこまでも深い谷は美しいの一言。
空も青すぎるしヒンデゥ・クシュも見えちゃったし、次から次へと色んな風景が
スライドショウを見ているかのように移り変わって行き、そのどれもにいちいち
感動していた。
車で来れて良かった、車が戻ってきてホントによかった。
あの一件の傷は、これにて完治いたしました。
≪山写真≫
ワハン数日目の出来事。
途中で機関銃剥き出しの国境警備隊に遭遇。
車を停められパスポートやらビザを確認した後、車の中の検査が始まった。
道端でこんなことされると思っても無かった。
しかもマーカスが動こうとするたびその兵隊2人ともが、ポシェットみたいなのに
入ってる小型の拳銃に手をそえて発射準備をする。
これ、変装した山賊とかだったらどうしよう。
色んな思いが駆け巡る。
私が恐怖に慄いている間、マーカスはこの道端荷物検査に腹をたて、
全部見やがれと言わんばかりに、相手の足元に積んでるものをバンバン放り投げている。
普段ものすごーく温厚な彼だが、怒るポイントと怒る相手、 そこなの???
この人の空気が読めなさもそうだが、
権威にあからさまに盾突く我が夫を目の前にして、私はさらに慄いた。
私がビビリすぎなのか。
これで相手が怒っちゃったらどうすんの??
君、丸腰だよ。
結局何にも問題が無い事を知るとあっさり解放してくれたけど、
やっぱまだ怖かったのでその日はどうも外で寝る気にならず、
近くの村で車を停めさせてくれる人探しを始めたのだった。
お二人とも元気そうで。
返信削除読むたびにマーが強い男ってイメージになってきてます。
俺たちも元気だぞー
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