2009/10/12

Pamir Highway

タジキスタン側の入管から1時間ほど先に行って、カラコルという湖に到着。
標高3900m。
コバルト色をした綺麗な湖だったけど、高さも高さなので湖畔では植物が育たず
塩が干上がっていた。
生命の匂いが一切しない、さびしく音のない湖。
さすがに空気も薄くなり、ちょっと動くだけで息が切れる。



翌日、パミールハイウェイで標高が最も高い4600mの峠を超えてムルガーブという
街に到着。
ここまでの道のり、想像してた以上に道の状態が良かった。


バザールでキルギス人のおじさんに、ドルからタジクソモニに両替してもらう。

タジキスタンに入ったというのに、キルギスの民族帽をかぶったおじさんたちが
たくさんいる。
国の北側に住んでるのは殆どキルギス人だとおじさんが言っていた。


街外れに温泉があるというので、道の途中の谷間で一泊して次の日行ってみた。
その日はラマダン明けの祝日だったので、沢山の人が訪れていた。
地元の人は1ソモ二だけど、わたし達は5ソモニ払うことになった。
若い女の子たちとスイカを食べながら入った温泉は汚かったけど、彼女たちが
声を揃えて歌うアラビック調の歌は、風呂エコーの効果もあって鳥肌もんだった。

その日はマーカスが男風呂で出会ったムルガーブに住むイスマイールという
パミール人のお家に招待され泊まらせてもらった。



マーカスと同じ32歳の彼はロシア人と結婚していたけど、その嫁の酒の飲みすぎが
原因で離婚したと言っていた。

タジキスタンも国土の9割以上をパミール山脈で占められていて、その谷ごとに
違う言葉を話す。
違う言葉と言っても共通点が多いことから、方言があるもの同士が話している
ような感覚らしい。
でもそこにウズベク人やキルギス人などが入ってくると、彼らの共通の言語である
ロシア語で会話が始まる。

中央アジア、南下するごとに文化や人々の生活様式が変わって行き、
着ている物も色濃くなってくる。
ちょっとずつ混ざり合ってきて、国境付近でごちゃ混ぜになって
またその国独自の色になっていくのをゆっくり眺められるのも、
陸路でのんびり行く旅の楽しみでもある。
しかもロシア語が広い範囲でまだ通じるのがありがたい。
これがもし各国違う言葉を話すようだったら、出来ることも
見えてくる物もまた違うものになっていたと思う。
あと警察との交渉とかも。

パミールハイウェイ4日目


この道路から南に外れた所にワハン渓谷というところがある。
ちょうどアフガニスタンとの国境を流れる川で、この川の北側にタジク人
南側にアフガニスタン人の村が点在している。

パミールにきたら、こっち側のルート「ワハン回廊」が断然面白いと言われていたので、
事前に通行許可をもらっておいた。
そのワハンに入る前に、もっと外れた所にも行ってみようということで、
道も不確かなまま足を伸ばしてみた。

見るもの全てが山な風景。
とにかくすごいんだけど、キルギスからずーっとこんな山を通ってきているので
ちょっと感動が薄れてくる。
相変わらず人の気配がなく、寂しく冷たい風が吹き荒れるところだった。
途中でユルタを発見。
ちょっと中を拝見させてもらいたかっただけなんだけど、お茶やらなにやらで
もてなして頂き、これから移動するのは、ものすごい強風だから危険と言われ
その日はそこに泊まらせてもらう事になった。
 彼らはキルギス人の遊牧民で、夏の間だけこの地にユルタを建て羊とヤクを育てている。
前に泊まったユルタと違い、今度は本物の遊牧民が暮らすユルタだった。


夕暮れ時、マーカスは男たちと家畜を集めに出かけ、私はお母さんと娘が
夕食の準備をするのを見ていた。
娘がうどんを打ち、お母さんが羊を煮込む。
ゆっくり2時間ぐらいかけて出来上がったごちそうは
ラグマンという中央アジアではおなじみの家庭料理で、ここではみんな
手でそのまま食べる。
これがまためちゃめちゃ美味しかった。
電気もないので一つだけランプを灯し、みんなで大皿を囲んでゆっくりの食事の時間が流れる。




食事が終わったら、することもないので早速寝る準備。
色とりどりの布団をいっぱいに敷き詰める。
ユルタには土の上に敷きもの程度の床しかないので
敷布団は多めにたっぷり敷く。
外は真っ暗で、ものすごい強風で雪まで降ってきた。
巨大な山脈の間にぽつんと一つだけあるユルタに、大人たちが川の字になって
死んだように静かに眠っている。
地続きだけど完全に隔離され、私達は円の中の囲われた安心空間にいる。
いやしかし、そう考えると外の世界がデカすぎて、怖くなってくる。
広所恐怖症なのか、閉所恐怖症なのか、良く分からない次元のソワソワが
襲ってくる。
異次元空間、未体験な空間であることは間違いなく。
とにかく、なかなか寝付けずにいた夜だった。

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