2009/07/06
ランクル誘拐事件(2)
ロシアに来て間もないころのブログにも書いたけど
こっちで走ってる車のほとんどが日本車で、中でも
ランクルの人気はすさまじい。
後で調べて分かったけど、ランクル専門の窃盗団も
いるらしく、彼らの活動範囲は日本まで及ぶことも
あるそうだ。
ウラジオストクで付けた防犯センサーは、サイレンはもちろん
ある所のヒューズを抜けば、車の電気系統がすべてストップして
エンジンがかからないようになる。
盗まれた日もそうだけど、30分以上駐車するところでは
昼夜を問わず、どこでもこのヒューズは抜くことも徹底して
とにかく用心していた。
犯行時間と思われるのは、深夜2時~朝の6時ごろ。
まさに泥棒が一番活気付く時間帯。
これも後で分かったことだけど、プロの窃盗団は防犯
センサーがあっても、いとも簡単に掻っ攫っていくそうだ。
私たちの車も、ガラスの破片だとか金属片だとかタイヤの
跡など犯行を物語る証拠はいっさい残さず、きれいさっぱり
持ってかれた。
クレーンで吊り上げて、トラックに載せたとしか考えられない。
くやしいけど、ホントお見事。
警察の届け出については相当悩んだ。
というのは、ロシアの警察の信用度は2~3%にも
満たないぐらい、ありえない低さ。
裁判官や政治家の信用度も低い。
国家の大黒柱となる人々すら金で買ったり、買われたりするのが
当たり前だそうだ。
賄賂が国家予算を上回るときもあるというから驚き。
この国では金で買えないものはないという。
もし私がロシア人だったら、まず警察には行かなかったと思う。
それは、この事件がおきてからいろいろ調べて分かったんだけど
まず、警察までもがグルになってるケースがあるということ。
後で触れるが、私たちのケースもどうやらこの例にもれず的な
匂いすら感じられる。
全てがつながってるかもしれない。
もちろん元締めはマフィア。
警察がマフィアに買われることなんてこの国ではザラにある。
取調べを受けた警察の所長そのものが超マフィアの風貌で、腕に刺青、
ティアドロップのサングラス。
マフィアの天下り先が、警察とかだったり??
ありえる。
だって、ここロシアだもん。
何を信じていいのか分からない。
警察が言うには、とにかく犯人からの連絡を待つしかないと
いうこと。
だから、ビラを作って、犯人専用の電話を買って
テレビ局に行って、流れるニュースを作ってもらったりした。
テレビ局の食いつきが、これまたすごかった。
最初は流れるニュースだけお願いするつもりだったけど、私たちの出会いから
この旅の経緯や事件のことを詳しく説明しているうちに、これはネタになる
と思ったのか、オフィスを出るころにはカメラマンとインタビュアーが
外で待っていた。
そして、なんの断りもなくかカメラが回り
「そこの柱に二人でビラをはって、悲しそうに歩いてきて」とか
「肩を寄せ合って話しをして」とか、軽く演技指導までされてしまい、
笑いをこらえながら、かわいそうな旅人を演じた。
仕方あるまい、車を、というか家を取り戻すためには、NOと言う選択肢など
なかった。
最後にカメラを目の前にまえにして、マイクを向けられインタビュー。
できれば日本語で、自分の言葉で感情を伝えたかったけど
英語で言うしかなかった。
車も大事だけど、もっと大事なものがたくさんあの車には詰まっている。
きっと車を盗んだ人たちにはどうでもいい物かもしれないけど
結婚祝いでもらった物、手紙や旅のお守り、そして結婚指輪!!
こういうものを失ったショックのほうが実は大きいという事を、必死に
訴えた。
「私たちの家を返してください。そして旅を続けさせてください。」
数時間後、どうにかこうにか編集されローカルとロシア全国ネット
両方でこの映像が流れたらしい。
しかもタダで流れるニュースも作ってくれて、その日行ったもう一つの
テレビ局も同様、タダで私たちのニュースを取り上げてくれた。
何なんだ、このシステム。
言うまでもなく、翌日から街を歩けば皆が振り向き、励ましの声を
掛けられ、見つかったかどうか訪ねられたり、ちょっとした時の人に
なってしまったようだ。
そんな中でビラを張るために、中国や中央アジアの人たちが
店を連ねる市場へ出かけた。
あっという間に人だかりになった。
その人だかりの中の女が、ビラをくれと言ってきたので1枚あげた。
数分後、市場を出たところでこの女と、女が連れた男に会う。
「この人たちよ、ほら」
ロシア語ではない言葉で男に話しかけ、そして呼び止められた。
「車、いくらでなら買い戻す?」
いきなりの事で、面をくらった。
こんなにも早く、犯人と接触?
この早すぎる展開に相当驚きをかくせずタジタジだったのだが
冷静に交渉を始めることにした。
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