キルギスのオシュという街に向かい山を下ること2日目、途中で車が故障している人を
発見。
エンジンがかからないので、15キロほど離れた村まで牽引していくことになった。
車をつなぐロープがボロすぎて、途中で何度も結びなおしながら山道を進んでいった。
村に着き、引張ってきた30年前の4人乗りのポンコツ車から出てきたのは7人の大人と赤ちゃん一人。
屋根には200キロ分のりんごが乗せられ、トランクを開けると生きてる
羊が2頭ギュウギュウに詰め込まれていた。
これで山をくだってきたらしい。
すごすぎる。
助けてくれたお礼にお茶でもどうかということで、その車に乗っていた男の人の
家に向かった。
家にはなぜか沢山の人が出入りしていた。
聞くとその日は法事で、40日前に亡くなったその一家の次男を偲ぶために方々から
親戚が集まっているという。
お茶やお菓子を頂いてその後出発しようと思ってたんだけど、この一家の主に
「今日は親切に助けてくれたお礼に羊を一頭料理するので、食べてってね」と言われ
断りきれず翌朝出発することにした。
さっき見た羊はトランクから出され、家の敷地内に放されのんびりと草を食べている。
私はなんとなく、この子達を直視できなかった。
家にいたのは全部で20人ぐらい。
若い女たちが食事やお茶や子供の世話をするのに家中歩きまわっている。
その中に一人英語がちょっと話せる人がいたので色々聞いたりするのにすごく助かった。
彼女はビシュケクでナースをしていると言っていた。
年配の人や年寄りは座っておしゃべりをしている。
客人が来るたびにこの家の最長老のおじいちゃんが、亡くなった自分の息子に
イスラムの祈りをささげる。
おばあちゃんが子供のようにオイオイ泣き出したり、親族間で揉めはじめたり、
酔っ払いの一家の主に絡まれたり、どうしていいか分からない時間が刻々と過ぎ
夜になった。
「じゃ、そろそろ行こうか」
おばちゃんが首を切るしぐさをした後、見るんだよというジェスチャーを加えてこう言った。
表にでると黒い羊が1頭綱につながれ、まるでペットのように男の横によりそっている。
全員が家から出てきて、メッカの方に向かい祈りを捧げだした。
羊もメッカの方に向かい、空を見上げていた。
祈りが終わるとすぐさま羊はひっくりかえされ、外にある台所専用の建物のなかに
連れられて、首を切られて息絶えた。
羊を食べるといわれた瞬間から、このことは想像できていた。
特にキルギスでは羊をバラすことは日常茶飯事で、バラせない男は男じゃないといわれるくらい
ナイフ一本で見事に解体する。
動物でもなんでも、殺す瞬間なんて見たくも無かった。
そんなの見たらきっとかわいそうで食べられなくなるんじゃないかとも思った。
だけど意を決して最初から最後まで見て、ホントにホントに一つの命がこの世から
消されるんだというリアルを体験した。
私達の為に、死んだんだ。
当たり前だけど、物凄く苦しそうだった。
どんな理由であれ文化であれ、残酷なものは残酷だ。
解体を手伝えと言われ、泣きそうになりながらつかんだ肉がまだ温かかった。
肉を食べるということは、動物を殺すこと。
そうです、私達は殺された動物の肉を食っているのです。
この体験を通して、 思い知ることになった。
深く考えたらキリがないんだろが、そんなことを考えていつもモヤモヤしながら
肉を食べることになるのだろうか。
白いトレイにスライスされて売られている肉や、パスタに入ってる細切れのベーコンを
見て、動物が息絶える瞬間なんて想像も出来ないだろう。
だけど私は見てしまった。
これからは感謝の気持ちを一度添えて、肉を頂けるような人になりたい。
羊が肉の塊になって大きい鍋に入れられたのが9時ごろで、3時間煮込んで客に振舞うという。
その間若い女たちは見事な手さばきで分解された内臓を洗ったり、切り刻んだりして
色んな料理を作っていた。
料理担当の男は、切り離された羊の頭に棒をさし直火で焼いている。
この頭が、この日の主役に捧げられるという。
深夜12時過ぎになり料理し終えた肉が大皿に山のように盛られ、
その上にさっき直火で焼いていた頭が飾られている。
羊の頬肉を主人がそぎとって自分が食べ、そのあと長老たちに分け与えられる。
そして残りの部分は、亡くなった男の人の息子と兄弟の一人が耳や目玉を分け合いながら食べていた。
一番美味しいといわれる脂身も同じく年配の人たちに分け与えられ、
あとは適当に回ってきた皿から好きな部分をとって食べる。
ちなみにわたしは、肉がどうこうじゃなくてこの羊肉の匂いがどうしてもダメで
食べられなかった。
そのあとは腸詰、スープ、肉入りのうどんが次々と出てきた。
前菜、メイン、サイドディッシュが脂ギトギトの肉のフルコース。
約20人で羊丸ごとたいらげておりました。
匂いと人の多さに気持ち悪くなり、いつどうやって寝たのか覚えてない。
そして翌日言うまでも無く、昨日の残りの肉が朝の食卓に並んでいた。
さすがにマーカスも肉地獄だといって、しばらく食べたくないと言っていた。
出発間際は写真撮影大会。
こっちの人はほんと写真に取られるのが好きなんだなぁ。
どこかで現像して送ってあげたら喜ぶだろうな。
またまた思いがけない出会いから、フツーのキルギス人の家庭にお邪魔して
貴重な体験をさせてもらいました。
人との出会いは楽しみだけど、いったいいつになったら街に着くんだろう。。。
そんなことを思いながら、山を越え谷を超え山を下って行きました。
0 件のコメント:
コメントを投稿