2011/11/01

最後のモハメッド

モロッコ旅最終章。

フェズからナドール。
途中の原っぱで1泊し、最後どーしても寄らなきゃいけなかったモハメッド宅。

途中で電話しろと言われたので、何度か連絡したんだけど
そのたびに
「あのねぇ、ラシーダ金がなくてホントに困ってるからね」と言うモハメッド。

金額とか言わない。くれとも言わない。
だけどこれはもう立派な要求ですよね、おじさん。

そんなこともあって、行きたくないなーーー、という感じだったんだけど、何せ大量の
荷物が置いてあるので寄らないわけにはいかない。

結局、最初のホスピタリティーはお金目当てだった。
それは途中からもう分かっていたけど、そんな状況でまた同じ家を訪ねるのも
気持ちが悪いものだった。

久々のモハメッド宅。
笑顔で出迎えてくれたラシーダと息子のヨセフ。
家の中に入っていくと、英語がベラベラの超いかつい兄ちゃんがやってきた。

「あ、あのぉ、私達モハメッドの知り合いなんですが、預けた荷物を取りにきました。
明日の船で帰るので、今日は一晩泊まらせてもらえませんか??」

恐る恐るそう訪ねると

「あなた達のことは、父から聞いています。もちろん、泊まってっていいですよ。」

ああ良かった。。。。って、この人誰??

あ、そういえば、モハメッドには最初の結婚で出来た息子がオランダにいると
言っていたっけ。

その彼も、バカンスでファミリーと2週間過ごし、明日の飛行機でオランダに帰ると
言っていた。

思ったよりも気さくな兄ちゃん、だけど話し方がモハメッドそっくり。

「先週、カサブランカの旅行先で親に渡すためにもってきた5000ユーロが
丸々盗まれた。モロッコ人はホントに最悪だ。。。」

またか・・・

これは、遺伝なのか??
最後の最後でまた混乱しなきゃなんないのか???

「そういう話、ここでこの前モハメッドから何回も聞かされたんだけど・・・・」

私達が、モハメットがした数々の話をこの息子君に話すと

「いや、それは殆どウソでしょ。」

それがなんでウソなのかも、全部説明してれた。

彼によると父親は相当の「虚言癖」を持ち、さらにはドラッグの後遺症による
パラノイアで精神が崩壊していると言っていた。

彼自身、16年間もこの父親との関係を経っており、やっと決心がついて、ついに
再会を果たしたところだったのだ。

だけど、会いに来るなら金をもってこいと言われ、更には家族で旅行をした旅費を
全部払い、挙句に5000ユーロ盗まれたというから、私達なんかと比べ物にならない
くらいの、大大大災難だ。

みんなでお茶している最中に、フランスのモハメッドから電話がかかってきた。
マークスとの会話の途中で、彼はこう言った。

「そこに俺の息子がいるけど、そいつには気をつけな。危ないよ。
金をせびるかもしれないし、なにか盗まれるかもしれない!」

自分の息子を泥棒呼ばわりする親がどこにいる??
マークスが怒ったのも当然だ。そして隣に座っていた息子に

「今、お父さんがアンタの事泥棒だから気をつけろって言ってるんだけど
どうする、この人??」

ああ、言っちゃった。。。。。

息子は怒りで震えていた。電話をぶん取って

「今、なんて言った??俺は人のものを盗むような人間じゃない!
なんでそんな事言うんだよっ!!!」

本当にかわいそうだった。
半分なみだ目だった。

モハメッドは

「そんなこと言ってない!マークスがウソついてる」

と言って、電話を切ってしまった。


その後も、パニックになったモハメッドから何度も電話がかかって来て
意味不明のことを言っていたらしい。

私達はもう相手にしないことにした。

ばつが悪いラシーダは夕食が終わった後、とっとと寝室に行ってしまい
その後二度と会うことはなかった。

私達は夜遅くまで色んな話をして、翌朝一睡も出来なかったという息子を
空港まで車で送って行ってあげた。

彼はとても正直で、ほんとに心がきれいな人間だった。
全てはお母さんのおかげだと言っていた。

キックボクシングのチャンピオンになったこともあって、日本でも
戦ったことがあるらしい。
今は引退したけど、手に入れた賞金で会社を設立し、オランダで暮らしている。

モハメッドファミリーとは、残念な分かれ方だったけど
最後、この息子に会えてよかった。

ウソが確定したことで、すっきりしたこともそうだけど、この息子の正直さ
人間としての強さに、ちょっと頭が下がる思いだった。

「あれでも、俺の親父なんだ。恥ずかしい奴だけど、俺は親父を愛してるよ。」

・・・・それにしても、あんな嘘つきな人間を見ることは、後にも先にもないだろうと思った。

最初の一歩でモハメッドに会い、旅の〆もモハメッドにやられた。

そして最終日、完全にモヤモヤが晴れて、1ヶ月ちょっと旅したモロッコとおさらば
する時が来たのだ。

最終章、あともう1回で終わり。

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