2013/09/25

カヴィール砂漠を行く(2)


たまたま遭遇してしまったカヴィール砂漠の砂丘。
 


わき道に逸れて良いことある日の一番良いパターンだな。





とは言え、2年前に訪ねた事があるモロッコでの砂漠の嵐のトラウマが再び蘇ってきて
きそうになり、若干心配ではあったんだけど、せっかくなので今日の寝床は
ここに決定。


砂漠、、、砂丘、、、

ビックリしますよ、この不動な世界。







こんな雄大な古の大地で、人間のちっぽけさなんて考えてもしようがない。

感じたのは、この静まり返った景色からヒシヒシと伝わってくる生命感。

いままでも、そしてこれからも永遠に弛みなく存在し続ける巨大な命。

人間の儚さなんか悟るよりも、この永遠の大地にねそべって体を沈めた感覚をたまに思い出して
私が生きる小さな小さな世知辛い世界での毎日を、こころ穏やかに生きてゆきたいと
そんなことを胸に焼き付けた1日。



砂漠パワーすごいです。




1時間ぐらい砂に体を埋め、うつ伏せになって落ちてゆく太陽を眺める。

そうして夜がやってきて、満点の星空が広がった。





不毛の地に来ても焚き火ができるよう、車の屋根に積んでいた薪に火をくべる。

砂漠にきたら、やっぱ火じゃないと。

私達は焚き火の前で毛布に包まって、色々な話をした。

そして流れ星を何個か見届けた後、サソリや蛇や人間が来ないことを願い、車のドアを
全開にし頭だけ車外に出るような形で眠ることにした。

無音の世界。なんにもない。
目を閉じると、心臓の音と耳の近くを流れる動脈の血の音が聞こえてくるぐらいの静寂。

目を開ければ、星が降る夜。
星に押しつぶされそうになるくらいの、心地の良い圧迫感を感じながら私は眠りに落ち

マークスは眠ることが出来ず、その星降る夜を明け方近くまで写真に収め続けていた。



カヴィール砂漠を行く(1)

砂漠に向けひた走る事数時間。

途中腹ごしらえの為に寄った小さな街で、食堂を探して暑さの中トボトボ歩いていると
通りかかった売店からおじさんが出てきて、ジュースと菓子パンをくれた。

「暑い時はね、これ食べたら元気出るから持ってきな!」

めちゃめちゃケミカルな味がするつぶつぶオレンジジュース。

だけど、こんな気さくな優しさがうれしいのね、イラン。

食堂もなんとか探し当て、しばらく車中泊になりそうだから野菜や食料を買い求めて
その後もひたすら砂漠に向かう。

景色はすでに荒野の大地に移りかわり、車はいよいよカヴィール砂漠へと突入していた。


 

地図を見ると、砂漠の真ん中に1本だけ北へ抜ける道がある。

写真のように、殆どの部分がアスファルトで舗装されていてアクセスは比較的簡単。

しかし、真っ直ぐな道があるとどうしても脇に逸れてみたくなる私達。

砂漠でこういう事をするのは、あまりよろしくないのだけれど、この大きな1本道までの
記録をGPSにちゃんと残しておいて、逸れてみる事にした。

茶色の点がYazdから砂漠を通りSemnanという街まで抜けるルート
こんなの見ても誰も分からないとは思うんですが、ざっくりすぎる感じでいうと、これから
お見せするのは、カヴィール砂漠を北へ走り、右に逸れたところにあった場所です。

なんていう名前?
場所はどこ??

それは私達もわかりません。

そんなことよりも、着いたところがこんなところだったという奇跡。

脱線した道の先にあった、素晴らしく幻想的な砂漠の世界。


 なにはともあれ、写真をば!

道を逸れれば舗装されてないガタガタ道が始まり・・・・



景色もだんだん険しくなってくる。


道らしき道もだんだんなくなってきて、だけど貯水用と思われる建造物があり・・・

 しばらく走っていると、景色が開けた感じになってきて遠くにうっすらと何かが見えてきた。

「砂丘だ!!」

今日から砂漠らへんを通るとは知っていたけど、まさかまさかの砂丘のお出まし。

とりあえず写真下の黒丸で囲ってある建物らしきものを目指してひた走る。

もうここから道はない。

ただただ直進するのみ。



 そしてそこにあったものは・・・・

またまた貯水用のシェルター

全く人の気配がしないカヴィール砂漠。
このわき道に逸れた数時間の間は、人っ子一人見かけることがなかった。

こんな所にこのシェルターがあるってことは、きっと遊牧民がどこかにいるのかも
しれないし、観光シーズン中だったら、観光客が砂漠ツアーなんかで来てもおかしくないところ。

しかし、だーれもいなくて、でっかい大地にただ二人ぽつねんと取り残されていて
広所恐怖症とでも言うのでしょうか。

とてつもなくデカすぎるところにいる自分が、とてつもなく小さすぎて、なんだかソワソワ
した感じになってくる。

砂丘に行く前、日差しが落ち着くまで休むことができたありがたい日陰処

この日もけっこうな暑さで体力を消耗していたので、この涼しげなシェルターで一休み。

水をたくさん飲んで、干乾びない準備を整えてから少しばかり眠りに落ちる。





この先にあった砂丘のお話はまた明日。




2013/09/17

Yazd,沈黙の塔

Yazd初日。

今日も暑い一日が終わった。

金曜モスクの目の前にあるゲストハウス。

閑散期第一週目だったこの日の宿泊客は私達だけで、そんなんだからか宿代も
一人5ユーロぐらいと、激安だった。

アルバイトの男性はとってもスロウで物腰が柔らかく、20歳そこそこでそのオーラは一体
どこから彼の体に宿るのだろうと不思議に思った。

多分、砂漠だな、砂漠。

以前会ったことのある、モロッコの砂漠の真ん中のゲストハウスで働いていたベルベル人
同じオーラを持つ男。

あのゆっくりさを、「トロい、LAZY」 と言う人がいるかもしれないけど、あの人たちの
スロウっぷりを見ていると、今世の中に蔓延るスローライフがどうのこうのとか、とても
とても陳腐な言葉に聞こえて仕方がない。

動きもそうだけど、もう生き方がね。。。

あんなの、真似ができるわけがないわ。

ゲストハウスの中庭。夢心地。。。

 さて、私はこの日久々シャワーを浴び、ぬれた髪を乾かしに宿の屋上テラスへと出る。

 生ぬるい風がとても心地よく、この日最後のアザ-ンが目の前のモスクから、それに
木魂するかのように、街の方々にあるモスクからも聞こえてくる。





ビデオを撮り終わって、その辺に転がっているプラスチックの椅子の汚れを少し払い
腰をかけて、空を見上げた。

「なんか、良い旅をしているなー。。。。。」

このとき、この瞬間に強烈にそんなことを思った。

そういう瞬間というのは、ふとやってきたにもかかわらず、いつまでも記憶に
残るものなのだ。

時間にして1分ぐらい黄昏てみたりした記憶が、イランという国を思い出すときに頭の片隅から
フワっと滲み出てくる。

あー、好きだな、この感覚。。。


Yazdは期待以上にステキで、イランの中では一番気に入った街になった。

土色の街を歩くと、いつからか時間が止まってしまったところにタイムスリップしてきた
ような気持ちになった。

この先も、ここではゆっくりとしたYazd時間がながれ、この街の様子も人々ののんびりさも
きっと100年経っても変わらないんだと思った。







 

さて、意外に気に入った街だったのでもう1日ぐらい泊まっていこうかと思ったんだけど
結構時間もなくなってきたので、先を急ぐ事に。

街を出る前には市内にあるゾロアスターの神殿に行き、1500年以上燃え続けているという
「火」を見に行った。





これがその火なんだけど、ガラスに囲まれている火を観光客が写真を取りまくっているような
ところで、全然神聖な感じがしなかった。

ということで、すぐさま街を後にし、次に向かった先は、郊外にある「沈黙の塔」

その昔、ゾロアスター教徒が鳥葬に利用していた丘である。



 今は街の郊外に佇むただの丘でしかないけど、その昔はこの山の頂上に沢山の亡骸が葬られ、鳥が集り喰いつまんでいったのかー。。。


んーーー


なかなか、想像を絶する光景に違いないけど、自分は沢山の命を頂いて生きてきたわけだから
死んだ時ぐらい鳥に食べられてもいいのかも、、、なんて思ってきたり、思わなかったり。




 そんな事を考えながら丘を下ると、妙にイチャイチャしているイラン人カップル発見。

いいのかこんなところで、あなたたちイラン人なのに!

って、こんな人里はなれた人気のないところでしかデートができないって。。。。

なんか、また急に切なくなってしまった。

いいんだよ、こんなところ観光客ぐらいしか来ないんだから好きなだけイチャイチャしておきなって。

そんな親心みたいなものも芽生えた、Yazd、沈黙の塔。

私達はこの後砂漠へ向かうため、ギラギラ太陽の下、車を南に走らせたのでした。

旅はまだまだ続きます。。。

2013/09/04

土色の街、風の塔、ヤスド。

旅日記の更新が大分遅れておりますが、時間がないだけで書き上げる気は満々にあるので
どうぞ最後までお付き合いください!
9月中はまたのんびり更新になるかなーーー・・・・


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5月中旬

イランに入国して3週間が経ち、私達はイラン中部の砂漠の街Yazd(ヤスド)まで
やってきた。

昨晩泊まった山から下りたら案の定、「That´s砂漠」的な暑くて厳しい1日が待っていた。

この日は金曜日で、イラン人の休日と言えばピクニック。
街に向かう私達とは逆に、街から山方面に行く車がごった返していた。


自作のマイガイドブックに前もって書いておいた、イランで行ってみたい何箇所かのうちの
一つ、ヤスド。

この街は、古代ペルシャ人が最も多く信仰していたゾロアスター教文化の中心地であり
その歴史的建造物もいくつか残っている。

ゾロアスター教は火を尊ぶことから「拝火教」とも言われていて、今でもイラン国内で
最も信者が多い地域。

正直その宗教の教義や歴史的背景はあまり良く分からないけど、拝火教という響きが
どうにもミステリアスなのと、あとは街並みに惹かれてやって来たのだ。

金曜日、観光地ながらバザールも商店も定休日なので街は全体的にひっそりしていた。

「金曜モスク」という名前のモスク。







チャドルをまとった女性たちが、隅っこに固まってお祈りをしていた。

金曜昼下がりの金曜モスク。
灼熱の屋外とは対照的に、ひんやりと静まり返った空間だった。

快適すぎてしばらく休んでいると、猫がやってきた。

その昔サマルカンドでも、こういう纏わりつく猫に遭遇した。


その時のねこさん

モスクに住む猫は、どうもなつっこいんだなー。



 モスクのすぐ近くにある安宿に部屋を取ってから、旧市街を散策。

ヤスドの街とはこんな感じ。
 土色の街並に、モスクのブルーが美しく融合する風景。
 
                                                             画像はwikipediaより


 暑さが厳しい砂漠の街では、こうやって土壁でてきた家同士を影が出来やすいように、
出来るだけ近い距離で建てて、影を造り暑さを凌ぐ。

この日はアイスクリームを2個食いするくらいうだるような暑さだったんだけど、家の中は信じられ
ないくらい涼しく快適なのだ。






そして、ヤスド建築と言われる中で最も有名なのが、この風採り塔。

旧市街に残っている古い建物のにはこの塔が多く見られる。

これは家の上に煙突状に建っている塔の四方から風を取り入れ、溜まった風は下に
溜められてる水で冷やされ、住空間に冷たい風を送り込むと言う、まさに天然の
クーラーみたいな装置。



装置という割には大きいけど、ヤスドにはこの風採りの塔を建築物として見学できる
ところがある。

ヤスドで最大の塔。33m。


 塔が立つ下の建物部分は、宮殿のテラス風な佇まいで、ヨーロッパの教会を彷彿させる
ステンドグラスや、神秘的なイスラムの幾何学模様の天井などで覆われていてて
建物の中だけでも一見の価値がある。







そして、この部分が煙突の風が降りてくるところ。

外にはそよりとも風が吹いてないのに、煙突内部のテクニカルな構造によって
どういうわけか空気の対流が起きて、風を取り入れているらしいのだ。
まさに天然の冷却装置。

これが何千年も前の技術だというから、先人の知恵、さらに驚き!

エンジニア職に就くマークスは興味深々で、写真取りまくり、煙突に顔突っ込み過ぎで
遠目から見ていて、けっこう笑えた。




散歩ついでとはいえ、2時間近くかけて歩いてきた塔をあとにして、タクシーで宿まで戻る。

夕暮れ時、いつもなら人が賑わうモスクやバザールの前でも、金曜日なだけあって
閑散としていた。

おまけに、観光シーズンは1週間前に終わっており、これから夏を迎えるイランにとっては
暑すぎて客足が遠のく厳しいシーズンだそうだ。

1週間前までは満員御礼状態だったホステルも、この日の客は私達だけだった。